「佐渡に生まれ、幼い頃から東京と佐渡、両方の空気を吸いながら育ちました。」と話すのは、佐渡にあるウェブ制作会社に2019年就職、現在は、島内の一軒家で生活している安土祐子(あづちゆうこ)さん。
「ずっと佐渡が好きで、いつかはおばあちゃんの近くに住みたいと、小学生のときから決めていました。小学3年生のころには、佐渡が好きすぎて、東京から佐渡まで1人で行けるまでになりました。おそらく生粋の佐渡人より船を利用しているんじゃないかな」。
佐渡へはことあるごとに来島していたものの、小・中・高校生活は東京で過ごしました。
その後、進学したのは音響系の専門学校。ここで国家資格の照明士の資格を取得した安土さんは、専門学校卒業後、フリーの照明士として働き始めました。
演劇、コンサート、ライブなど舞台があればどこへでも行かせていただきました。そこでいつか佐渡で照明やイベント会社をできたらいいかもしれない。個人的に島内に昔からある職業ではなくて、誰もやっていない職業をしたい。今まで島内にないものを行うことで島に住む方に楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいという想いがあったからです」。
そんな想いを抱きながらフリーランスとして働く一方で、安土さんは都内のライブレストランで広報のアルバイトも始めました。
「照明の仕事から始めたのですが、高校時代にデザインやウェブ制作を専攻していたこともあり、ポスター制作やウェブ更新など、広報の仕事も任せてもらえるようになりました。広報の仕事を経験したことで『ネット環境さえあれば、場所を問わずに仕事ができる』ということを知り、佐渡への移住が少し現実味を帯びてくるようになりました」。
いつかは佐渡に移住したいと思いながら照明士として働いていた安土さんですが、移住の話を親戚にするも、全員が反対。そんな中、安土さんに味方が現れます。
「佐渡市役所地域振興課と佐渡UIターンサポートセンターが主催している『佐渡部』というイベントがあります。佐渡部では佐渡が大好きな人たちや、今でもよくしていただいている佐渡の方々とのつながりを得ることができました。『私以外にも佐渡が大好きな人がこんなにいたんだ』ということがとても嬉しかったです。特に大きかったのは、UIターンサポートセンターの熊野さんとの出逢いでした」。
安土さんは、佐渡へ移住することは既に決めていたものの、佐渡での職はまだ見つけられていませんでした。
「移住する前に佐渡市がおすすめする物件の中から家を購入すると、リノベーション費用に対して補助金がもらえたんです。だから、先に申請し、職はフリーランスとして東京からの仕事を佐渡に持ち込み、やりたいことがたくさんあったことや、他にも佐渡内でのツテがあったこともあり、定職に就くことは考えていませんでした」。
「そんなとき、元々古民家好きの私にとって、大変興味深いと思っていたウェブ制作会社がたまたま人材を募集していることを知りました。後日東京でtaneの榎社長と顔合わせをしました。元々は友人を紹介するために同席したのですが、有り難いことに私まで内定をいただけることになりました 」。
「私も話を聞くうちに興味がどんどん湧いていったのでとても嬉しかったです。榎社長には後日きちんとお話の場を設けていただき、いずれは佐渡でイベントをしたいという私の想いも汲んでいただけたので、即決でした」。
めでたく職が決まったものの、安土さんにとってはIT業界で働くことも、会社員として働くこともすべてが初めて。入社して1年くらいは佐渡を感じる余裕がなかったそうです。
「仕事に慣れるのに必死で生活は職場と会社の往復だけ。クライアントも東京の方で、佐渡で暮らしていることを実感できない毎日でした」。
そんな日々に今年の夏、変化が起きました。 「おばあちゃんの住む場所は佐渡の北西部にある高千(タカチ)という限界集落なのですが、この場所にゆかりのある3人の女性と知り合いました。同世代ということもあり、その日のうちに『高千をなんとかしないといけない!』と意気投合。勢いそのままにYouTubeを始めました。」
「高千んもんがやるYouTube(2021年10月25日現在53,631回再生)というチャンネルで、高千や佐渡の魅力を発信していこうというのがコンセプトです。コメントをいただくと見ていただいていると実感できますし、モチベーションアップにもつながりました。楽しみにしてくれている人がいるなら、海中映像を撮ってみようかなって」。
YouTubeの配信は佐渡の魅力や移住への想いを再確認するきっかけになったと安土さんは続けます。
「島の皆さんからも、ありがとうと声をかけていただけるようになりました。きっと佐渡を盛り上げたいと島のみんなも思っているんだと思います。今、佐渡に移住する方が増え、面白い人が増え、アツい街になっていると思います。高千んもんの4人で佐渡の魅力を発信しつつ、いつかは佐渡でイベントが行うのが私の夢です」。